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(編集後記に代えて)

 終戦は、静岡県の駿河湾に面した人口3万弱の町で迎えました。東京から集団疎開があるくらいの町ですが、北側の台地に海軍の小さな飛行場があった為に、艦載機の襲来が相次ぎ、緊張した日々を送っていました。  数年前からの食糧難に加え、地区別に神社や寺で分散授業が行われるなど、子ども心にも戦況の厳しさがわかりました。広島と長崎にもの凄い威力の新型爆弾が投下されたが、白いシャツを着ていれば大丈夫だという流言にホッとしたのも束の間、ソ連まで参戦の報に不安が募ったものでした。  それだけに終戦のときの解放感は大きく、町全体に安堵感が漲り、活気も戻ってきました。数日後から、リュックを背負った復員兵が目立ち始め、我が家にも、中国と南方から2人の叔父が帰ってきました。  その夜、バシー海峡で輸送船が撃沈され、海に5時間漂ったあと救助された叔父の話に聞き入りました。体が冷えると放尿して下半身を温めたこと、波の頂上に行くと大勢の人が見えて安心するものの谷間で1人になると心細かったことなど、驚いたり興奮したりしました。

 40年前、月刊誌の編集長だったとき、読者からノンフィクション作品を募集したところ、約300編のうち80%が戦争体験でした。ほとんどが戦争の悲惨さを訴えたものでしたが、中にシンガポール攻略戦に参加した兵士の勝ち戦を活写したものがあったのが印象的でした。  8月になるとマスコミが競って戦争体験を取り上げますが、ワンパターンのきらいがあります。私は、さまざまな人々の戦争体験を集めた図書館を作るのが念願で、この構想を小欄に書いたところ、何人かから「やろう」と励まされました。  ところが仕事に追われて余裕がなかったため、実行できませんでしたが、もう戦争体験者も高齢化するばかりです。いまが潮時と考えてはいますが……。

 デフレ、円高、株安などで日本列島から活気が失われています。企業の低迷で学生の就職率も低く留年が増えていますし、弁護士の卵ですら事務所の採用が少なく苦戦です。定年を迎えたサラリーマンの再就職となると、さらに狭き門です。  ところが、一芸に長じて会社や業界で存在感を認められた人には、不況もどこ吹く風のようです。食品会社で衛生管理のベテランだった知人には、ある団体から週1回で5万円という話がありました。出版社で書籍編集一筋だった友人も「若い人にノウハウを」と招かれました。  真面目に王道を歩み、実績を積んでいれば誰かが見ているものです。ベテランの豊富な知識や熟達した技は、どんな時代でも求められています。


編集主幹 伊藤寿男

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表紙/水野典子 カット/山田哲朗
写真提供/共同通信 産経新聞 時事通信

 

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