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栃木県御料牧場 放射線測定せずの謎
天皇陛下のご意思はどこに
天皇家の御食材の生産や外交上も重要な施設だけに安全性を公にすべきだ


■宮内庁は「独自の調査せず」と
 3・11東日本大震災から8か月が過ぎようとしている。被災地の復興はそれでもまだ目に見えるところまではきていない。ただ、この間、被災者も国民も一様に安堵したことがあった。天皇皇后両陛下をはじめとして、皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻らの被災者お見舞いである。  一方、福島第一原発事故による放射線拡散が、3・11直後の風向きや雨量によって特定の地域に限定されるが、長い舌のように広範囲に及んでいることがわかった。  火山学が専門の早川由紀夫群馬大学教授は、数千か所の測定値を基に「等値線」を引き、3・11以降、数日の間に放射性物質が四つのルートで拡散していったことを明らかにし、公表している。そのうち「飯舘ルート」と「東京ルート」から枝分かれした「宇都宮ルート」の中に、宮内庁那須御用邸や、栃木県高根沢町と芳賀町にまたがる御料牧場がすっぽり入っていた。  文部科学省が8〜9月、航空機を使って群馬県の放射性セシウムの蓄積量を調査し、汚染マップとして公表したが、早川教授の「四ルート」とほぼ重なる結果だった。  栃木県では全県7か所で7月から放射線量の「定点観測」を行い、発表するようになった。  10月6日(午前8時、地上50センチメートル)、そのうち2か所での測定結果はこうだ。那須町立図書館毎時0・31マイクロシーベルト(年換算2・71ミリシーベルト)。芳賀庁舎毎時0・05マイクロシーベルト(同0・43ミリシーベルト)。那須町立図書館の数値は国際放射線防護委員会が定めた許容量基準値の年間10を超えている。  それでは、那須御用邸や御料牧場の放射線量はどうやって測定しているのだろうか。  本誌の取材に宮内庁総務課報道室はこう答えた。 「御料牧場、那須御用邸の所在する栃木県、皇居、赤坂御用地の所在する東京都の空間放射線量については、それぞれ栃木県、東京都等の公的機関が定点での観測を継続、特に問題となる数値は観測されていないと承知しており、現在のところ宮内庁独自で検査を行う必要はないと考えています」  しかし、御料牧場の果している役割をみるとき、宮内庁のこんな回答では逆に不安を煽るばかりだ。 『天皇家の御食材―御料牧場に安心を学ぶ』の著者で、農政ジャーナリストの横田哲治氏が語る。 「御料牧場の放射線量を測っていないなんて、そんなことならいわないほうがいい。いい方がいかにもまずい。宮内庁のお役人らしい」



■両陛下は卵1千個を被災者に
 御料牧場は栃木県宇都宮市から北東方面へ約13キロメートル、南に筑波山、北に那須連山を望む鬼怒川左岸の標高145メートルの丘陵にあり、敷地面積は252ヘクタール、皇居の2倍以上、東京ドーム54個分にもなる。  明治8年の開設だが、'69年、新東京国際空港建設計画に伴い、千葉県成田市三里塚周辺から、現地に移転した。目的は「皇室の用に供する家畜の飼養、農畜産物の生産及びこれに付帯する事業を行う機関」(宮内庁組織令第32条)である。  内廷皇族(皇后陛下、皇太子殿下、雅子妃殿下、愛子さま)の食材は、米、魚、調味料などを除いて、場長以下62人、非常勤職員11人が働く御料牧場で生産されている。家畜類は馬、牛、綿羊、豚、鶏などで、野菜類は大根、人参などのそ菜約20種類に及ぶ。野菜や牛乳は2日に一度、宮内庁大膳課に運ばれるが、牛乳は低温殺菌処理のため、日持ちがせず、余裕のあるときは職員用に供される。  また御料牧場は年1回(2日間)、在日外交団が2班に分かれて接待される場所でもある。  招待客は、馬車に乗ったり、乗馬をしたり、サイクリングを楽しむ。午餐会は御料牧場の集会所前に張られた大きなテントの中で始まる。そこでの人気メニューは、ジンギスカンだ。ジンギスカンとはいっても生後2か年以内の子羊のラムで、これを御料牧場特製のタレでいただく。国賓などを招いての晩餐会に供される特上の肉である。そして午後は、「古式馬術」が披露されて、1日の予定を終える。  雅子さまが愛子さまをつれて何度も訪問されているところでもある。  天皇家の食材と外交上でもこれほど大切なところなのに、放射線量は測定していませんで、国内外にも通用すると思っているのだろうか。  ただ、天皇皇后両陛下は行動で示しておられるところがある。  7月26日、両陛下は高根沢町の御料牧場をご視察、翌27日には那須町の施設で生活している被災者をお見舞い、続いて29日には地元農家を視察された。また、両陛下が福島県の被災地を訪問した際(5月11日)、風評被害に両陛下がお心を痛められていることを知った佐藤雄平福島県知事は、農産物について説明すると、わざわざ購入を希望されたという。  新聞報道によると、イチゴ、シイタケ、アスパラガス、ブロッコリーなどがセットになったもの3セットを、私費で購入された。  さらに遡ると、大震災直後の3月下旬、両陛下の意向を受けて、栃木県内に避難してきている被災者に、御料牧場で取れた卵約1千個、さつまいも、それに缶詰などの食料が届けられている。  こうした振る舞いは、いずれも科学的根拠があってのことなのだから、これらと同じように、御料牧場などの放射線量も測定して公表するのが一番いいのである。



■陛下は牧場経営でも妥協せず
 いまその御料牧場に新しい風が吹きつつある。御料牧場の経営問題だ。 「皇居の2倍以上の広さのある牧場を持ちながら、あれだけの職員数で収入はゼロ。畜産物や農産物を販売するわけでもない。決められた国の予算だけでやっている。英国の王室の牧場では製品を販売して稼いでいる。国がこれだけの借金を抱えているときに、日本のような牧場経営はいつまで続けられるのか。数年前、御料牧場に取材で通っているとき、当時の牧場長などといろいろ議論をした」(前出、横田氏)  実態はどうか、御料牧場の予算はいくらぐらいなのか。 「御料牧場は宮内庁の施設等機関であり、独立した予算を持っておりませんので、御料牧場の年間予算という概念そのものがありません」(宮内庁報道室)  しかし、宮内庁予算のどのくらいかは報道室が把握していないでどこが把握するというのか。  天皇陛下は、牧場経営についても妥協を許さない。人員は本当に必要最小限なのか、車の配送なども自分たちでやらずに民間業者に委託し、キーだけ管理するほうが経費節減になるのではないか。そういう目で経営を見ておられるといわれる。  それだけになおさら、御料牧場の放射線量など曖昧にしておけない。

(2011年11月号掲載)
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