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■「親中派首相」が中国に協力を
中国製冷凍ギョーザの中毒事件が発覚して、早くも３か月が過ぎた。
だが、日中両国による捜査は暗礁に乗り上げてしまった。中国公安省刑事偵査局の余新民副局長が記者会見で、「実験の結果メタミドホスは袋の外側から内側に浸透する」と、日本側の鑑定結果と逆の見方を示したためだ。
しかし、日本薬科大学の船山信次教授は、小社の『くらしとからだ』（��56号）で、こう疑問を呈している。
「もしギョーザの袋に科学的あるいは物理的損傷を与えずに農薬溶剤が袋を浸透するならば、この袋はやはり化学物質であるギョーザの香りなどは透過させず、農薬溶液だけを透過させるというとんでもない性能をもつということになる」
要するに、そんなことはありえないといっているのだ。信じられないことに、福田首相は余副局長の会見があったその日、記者団にこう語った。
「中国捜査当局は、日本と共同してしっかり調査したいといったのではないか。非常に前向きだ」
いくら「親中国派」として知られる福田首相とはいえ、この発言はあまりにも国民をバカにしている。中国は８月の北京五輪を控えて、毒ギョーザ事件に早々と幕を引きたいところだが、福田首相がそれに手を貸す格好だ。
そんな折、今度は花王（尾崎元規社長）の大ヒット商品「ヘルシア緑茶」からやはり農薬の除草剤成分が検出される事件が起きた。
３月26日、東京都練馬区の「ライフエクストラ大泉学園駅前店」で「ヘルシア緑茶（350ml）」を２本購入した主婦の夫が３月31日に一口飲んだところ、異常な苦さなどを感じてすぐ吐き出し、一時的に下痢症状を訴えた。男性はその日、花王の消費者相談室に連絡。花王が分析したところ、除草剤成分（グリホサート）が検出され、すぐさま警視庁と保健所に連絡された。警視庁捜査一課と石神井署は何者かが注入した疑いが強いとして捜査を始めた。
花王の安川拓次フード＆ビバレッジ事業グループ長は、４月５日、本社で記者会見し、こう説明した。
「（除草剤成分は）多量だが、致死量には達していない」
花王の消費者相談室には事件発覚後の５日早朝から、「この商品は大丈夫か」などといった問い合わせが相次いだ。フリーダイヤルによる相談受け付けの件数は数百件にのぼったという。
その11日後、兵庫県加東市でも「爽健美茶」（日本コカ・コーラ）を飲んだ無職の女性が気分が悪くなって病院に運ばれた。ヘルシア緑茶と同じ成分（グリホサート）が検出された。
■カテキンと肝障害の関連性は
ヘルシア緑茶は、'03年５月に発売され、「茶カテキン」が普通の緑茶の数倍も含まれており、健康効果を表示することができる「特定保健用食品」（トクホ）である。「脂肪を消費しやすくなる」などとうたい、年間約300億円を売り上げる大ヒット商品だ。
しかし、いまなぜヘルシア緑茶などが狙われたのか。今回の除草剤成分混入は、時期が時期だけに冷凍ギョーザ事件との関連が一部で囁かれている。
中国製冷凍ギョーザには、日本では流通していない農薬が混入されていたのが判明したのだから、どうみても中国は分が悪い。この毒ギョーザ事件の真相究明の攪乱を意図した犯罪ではないのかとの見方だ。世間を騒がせて喜ぶ単純な「愉快犯」説もある。
いずれにしても、ヘルシア緑茶への除草剤成分混入事件は、以前からいわれていたある疑念を再浮上させることになった。実は、ヘルシア緑茶に関しては、「トクホ」の許可を受けているにもかかわらず、肝障害との関連が疑われていたのである。
昨年１月、カナダ保健省が緑茶抽出製品の摂取との関連が疑われる肝毒性の事例を公表した。独立行政法人の国立健康・栄養研究所が、それをすぐ「安全情報・被害関連情報」としてネットなどで公開していたのである。カナダの事例はこうだった。
42歳の女性が黄疸と腹部の不快を訴えて入院、その後さらに症状が悪化して肝移植を受けた。女性は緑茶抽出物を含む製品（カフェインを除き、カテキン１カプセル中100ミリグラムを含む）を１日６カプセル、６か月間摂取していた（家庭で「ノミスプレー」や避妊用の低用量ピルの注射も３か月に１回受けていた）。
また、因果関係は明らかではないが、'05年には米国のＮＩＨ（国立衛生研究所）などが、緑茶の水アルコール抽出物（25％のカテキンと５〜10％のカフェインを含む製品）による劇症肝炎の疑いを報告した文献もある。これも同研究所が公開している。
国立健康・栄養研究所では、ネットで次のように注意を喚起している。
「緑茶抽出物を利用した製品は日本でも発売されているが、現時点（'07年１月）では類似の健康被害の報告は見当たりません。しかし、日本人が日常的に摂取している茶の成分であっても、錠剤やカプセルの形態にすると、特定成分を過剰に摂取することが懸念されます。また水アルコールで抽出しているため、通常は摂取しない未知の物質が抽出・濃縮され、それを摂取することで有害となる可能性があります」
高濃度の茶カテキンが原因ではないかと疑われる肝臓障害は、フランスやスペインでも報告されており、販売中止に追い込まれていた。
花王はしかし、具体的な行動は何もとらなかったのである。
この問題を逸早く報道してきたのは、インターネットニュースウェブサイトの「マイニュースジャパン」だ。彼らはカナダでの事例が公開された直後、花王に対してこういう質問をした。
「花王は（カナダなどの）事例を知っているのか」「肝臓への安全性は、どのように確認しているのか」――。
回答は「問題はない」という内容だった。「ヘルシア緑茶・ヘルシアウォーター」については、使用されている原料・製品の各種安全性試験を実施し、肝臓への影響を含めて問題のないことを確認している――。
ところが、肝臓への影響を調べてはいるが、摂取期間はわずか３か月だったことがわかっている。
■「エコナ」にも発がん作用疑惑
'03年９月26日の読売新聞朝刊には、「カテキンでＤＮＡ損傷」という記事が載った。人間の細胞に緑茶に含まれる約40倍の濃度のカテキンを与えると、通常の状態に比べて１・５〜２倍、ＤＮＡが傷ついた――。
川西正祐三重大学医学部教授らが、９月27日の日本がん学会で発表する予定の内容だった。花王は早速、ホームページで次のように「反論」している。
日本がん学会で発表されたカテキン濃度は「ヘルシア緑茶」を飲用した場合の人におけるカテキンの血中濃度の１千倍である。それに対して「ヘルシア緑茶」のカテキン濃度は急須でいれたお茶の２倍程度。「ヘルシア緑茶」は、「トクホ」の申請の際に各種の安全性試験データを提出している。食経験もふまえて安全性の評価を受けており、問題はない――。
だがここで大事なのは、「カテキン類には本質的にＤＮＡ障害作用があるということを示した点で注目される」（『環境と住居』'06年３月号、大東肇京都大学農学部教授）ことだ。
花王には“前科”がある。「体に脂肪がつきにくい」などと謳った「トクホ」のクッキングオイル「健康エコナクッキングオイル」や「エコナマヨネーズタイプ」などの主成分「ジアシルグリセロール」問題だ。
'05年、国立がんセンター・研究所は「ジアシルグリセロール」は「扁平上皮がんのプロモーション作用（発がん促進作用）のあることが示唆された」という実験結果をまとめた。
同年、厚労省も大がかりな追加試験に着手することを決めている。
ところが、それがその後どうなったのか。担当の厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室に電話を入れて驚いた。本誌が追加試験のその後について聞こうとすると、大沢庶務係長はこう答えたのだ。
「経済的波及があると考えられる企業情報なので、お答えできません。（試験の期間、終了後の報告予定などについても）一切お答えできません」
花王はそれをいいことにして、なにもしていない。
本誌は花王に「ヘルシア緑茶事件」について取材を申し入れたが、「忙しくて対応できない」と断られた。
花王の消費者相談室は有名だが、一体何の相談に乗っているのか。
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