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■マスコミを懐柔する「招待券」
千葉県浦安市の東京ディズニーランドで'07年12月9日、停電が起こり、41のアトラクションのうち、人気の「スペース・マウンテン」などを含めて半数以上の25アトラクションが停止した。
電気系統のシステム障害が発生したのは午後6時10分頃。2時間半近くしてやっと復旧し始めたが、「ウエスタンリバー鉄道」など3施設は午後10時の閉園まで停止したままだった。
運営会社のオリエンタルランドによると、原因は変電所の制御装置に間違って配線した単純ミスで、障害が発生したとき園内には約4万人の客がいたが、アトラクションに取り残されたりケガをした客はいなかったという。
'07年中に発覚したオリエンタルランドの不祥事は、ほかにいくつもある。東京ディズニーシーのレストラン「ニューヨーク・デリ」は、賞味期限を過ぎたカラシ入り調味料を使ったサンドイッチを234食、東京ディズニーランドのレストラン「イーストサイド・カフェ」は、賞味期限を過ぎたモッツァレラチーズを使ったメニューを9食、客に出していたことがわかった。
また、東京ディズニーシー内や提携先のホテルで販売したクッキー計1万9千個には、賞味期限が切れたチョコレートが使われていたことがわかった。チョコレートの賞味期限は'04年10月まで。発覚したのが'07年1月だから、2年3か月も過ぎていた。
同じような不祥事が他の大企業で起きていれば、不二家が賞味期限切れの材料を使っていてバッシングを受けたようにマスコミの格好の餌食となり、トップの更迭など経営責任が問われてもおかしくはない。ところが、新聞ではほとんどベタ記事扱い、テレビのニュース番組や情報番組でも大きく取り上げられることはなかった。なぜか。
オリエンタルランドは東京ディズニーランドや東京ディズニーシーの広告を、新聞やテレビなど各種媒体に大量に出稿している。タイアップ企画も多く、某テレビ局プロデューサーが「ヘタに騒ぎを大きくして、オリエンタルランドとの関係を悪くしたくない」と漏らすように、大手マスコミはマイナス情報をほとんど流さない。
さらに、オリエンタルランドやその関係者からはマスコミ関係者に、手心を加えてもらうことを見込んだ“プレゼント攻勢”がかかる。
あるマスコミ関係者が証言する。
「毎年、東京ディズニーランドに無料招待するチケットとの引き換え用紙などがプレゼントされる。引き換え用紙を一般入場ゲート脇の専用窓口に提出すると、入園パスポートと千円程度の食事券がもらえるようになっている」
本誌は一貫してオリエンタルランド及び加賀見俊夫代表取締役会長兼CEOに関する疑惑や姿勢について追及してきたが、ここへ来て再び新たな火種が燻っている。本誌編集部に「オリエンタルランド従業員」と名乗る人物からの告発文が舞い込んだ。
文書はA4判12枚にも及び、オリエンタルランド加賀見氏に関する数々の“内部告発”が綴られている。
冒頭から衝撃的な言葉が並ぶ。
〈我々は、日々苦悩しているオリエンタルランドに勤務する従業員であり、この書状は内部告発であります。我々の目的は、オリエンタルランドを私物化して、好き勝手に、私利私欲だけしか考えていない、自称オーナーの会長兼CEO加賀見、そしてそれを取り巻く何も言えない、何もしない、自分の保身だけを考えている取締役、執行役員を、この「心の産業」であったはずのオリエンタルランドから抹消することであります〉
■“腹心”の砂山専務だけが頼り
こう前置きした上で、続けて、人事体制に言及している。
〈オリエンタルランドは体制を転換し、さらに独裁経営に拍車がかかり、この舞浜の地は“ゲシュタポ”“ナチス”という状況になっております。
もう一部上場企業とは思えず、表の顔と内部の顔が、まさにジキルとハイド状態であり、管理職、従業員は、いつ“処刑”に遭うのか恐れて、誰も何もいえない、本当に悲惨な状態です。
そして、'07年4月に、加賀見は自分の後継者として、経理畑出身の砂山(起一)という最悪の人間を代表取締役専務に任命し、実質、オリエンタルランドはこの2人で勝手に経営している状況です〉
砂山氏は'70年にオリエンタルランドに入社し、経理部長や常務取締役などを歴任。告発文書に書かれている通り、昨年4月に取締役専務執行役員経営戦略本部長に就任して、6月に代表取締役専務執行役員となった。
加賀見会長と腹心の砂山専務だけで経営の舵取りをしているというなら、社長やほかの幹部はいったい何をしているのだろうか。
〈役員のなかでも心のあった代表取締役副社長の長岡は、実質、経理担当役員に降格。そして従業員のことを一番考えている代表取締役社長の福島は、社長なのに重要な会議にも呼ばれず、重要案件の決定は事後で知るという、とんでもない状況であります〉
イエスマンばかりで周りを固める手法についても、触れられている。
〈この数か月、目立ってものをいう部長クラス・課長クラスが次々と、加賀見と砂山がつくり上げた虚偽を事実として擦り付けられ、降格や減給、そして、反省部屋(=人事部付となり誰もいないオフィスに何もさせずに拉致状態にする精神的虐待部屋)への異動を処刑執行しています〉
ところどころ皮肉を込めた表現もあるが、不祥事で第一線から降りたはずの加賀見氏と彼を取り巻くワンマン経営ぶりが実名で次々と出てくる。2年半前に指摘された右翼関連企業との関係もいまだに切れていないという。
右翼との関係が世間に知れ渡ったのは、'05年5月のことだった。
オリエンタルランドは'84年から20年以上にわたって、本社ビルなどの清掃を不動産会社「中央興発」に委託していた。中央興発は、右翼団体幹部と関係の深い会社で、親族が代表取締役や役員を務めていたことがある。
契約料は月額900万円。中央興発は清掃業務を東京の大手ビルメンテナンス会社に下請けに出しており、事実上、業務を丸投げしているだけだった。オリエンタルランドは約20年間に、総額約21億円を支払っており、その一部が右翼団体幹部への“利益供与”と見なされても仕方のない状況を露呈してしまったのである。そのほかにも同じ右翼団体幹部が関連する建設会社やゴルフ開発会社との関係が発覚した。
加賀見氏は死人に口なしとばかりに故・高橋政知元会長にすべての責任を押し付け、「志賀さんは高橋さんが付き合っていた人。志賀さんと中央興発との関係は知らない」と話した。
■警察当局とのパイプが危ない
告発文には、この問題が発覚し、「当時の事情を知るものが他界しているため詳細については不明」との文言が入ったリリースを出した際の一悶着が、生々しく再現されている。
〈総務担当・広報担当役員の上西は、「このような嘘は良くない。特に高橋さんに責任を負わせる嘘は良くない」と、勇気を振り絞って直訴したそうですが、「私が失脚してもいいのか。お前の将来もないぞ」と一喝。それでも、「高橋さんの名前を出すと、従業員の反発、特に幹部クラスは高橋さんのために仕事をしていた人も多いので得策ではない」と反発もしたそうですが、「これ以上いうとクビにするぞ」といわれ、引き下がったという経緯も聞こえてきました〉
加賀見氏は本誌の取材に対しても、志賀氏とは「大昔に面識はあったが、最近('05年1月当時)はまったく会ったことはない」などといっていた。しかし、内部告発文書によれば、違う。
〈中央興発との契約を開始した当時の常務取締役総務部担当兼広報部長は加賀見であり、高橋さんの腰巾着としていつも一緒に後ろにいた加賀見が志賀氏を知らない訳もありません。当時の様子をよく知っている社員に聞けば、ちょくちょく志賀氏がオリエンタルランド本社を訪れ、高橋さんと共に加賀見も同席し、細かいことは、加賀見が話を聞き、いつも「志賀先生、志賀先生」と床におでこがつくぐらいの低姿勢で対応し、中央興発との契約や、志賀氏の関係者のオリエンタルランドの入社の指示も、すべて加賀見が総務部長、人事部長に絶対命令指示を出していたのは明白です〉
そして、最近この「中央興発」事件関連で再び動きが出てきたという。それは、オリエンタルランドと警察当局との“距離”の問題だというのだ。
〈警察当局から加賀見を守っていた、元警視庁副総監の岡村常務の後任を、オリエンタルランドに送ってもらいたいと警視庁に打診したところ、「もう庇い切れませんし、そのような時代ではない」ということで、断られた事実がありました。
実は('07年の)4月で岡村常務は退任予定だったのですが、警視庁から「後任はダメ」といわれ、急遽、続投になった経緯があったとのことです〉
オリエンタルランドは東証一部に上場した翌年の'97年、岡村健氏を迎え入れた。健氏は、東芝元社長で現在、日本商工会議所会頭の岡村正氏の実兄である。74歳の健氏は、現在も常務執行役員に留まったままだ。
■浅草芸者と加賀見を結ぶ疑惑
加賀見氏の財界活動という点では、
'02年雑誌『財界』が主催する経営者賞を受賞。その甲斐あってか、'03年4月には経済同友会副代表幹事の要職に就き、'07年3月に退任した。だが、財界での力はほとんどなかったらしい。
〈加賀見氏自身が経済同友会の副代表幹事になっても、結局メンバーからの信頼は得られずに任期を終わっていますし、とにかく、中身が無いということは、誰でも感じてしまう人間なのです。そして、小心者でもあり、自分の周りが薄くなってくると心配で心配でしょうがなく、その腹いせは社内で傲慢を振るうという状況に表れていると思います〉
頼みの綱であった警視庁とのパイプが切れることになるため、オリエンタルランド内では中央興発事件に関する捜査や事情聴取に対する“隠蔽工作”が始まったと、告発書は指摘する。
〈このお粗末な動きはオリエンタルランドグループ会社で清掃警備を実施している「舞浜ビルメンテナンス」に対して、中央興発との契約当時の偽装の相見積もりを作成し、中央興発が金額的にも質的にも優位であり、その結果として中央興発に発注したという捏造工作であります。当時は舞浜ビルメンテナンスの前身であるゼネラルサービス部という部署が清掃関係を担当しており、その委託先も巻き込み、当時の稟議や書類、見積もり等を捏造している状況なのです〉
「こんなことはおかしい」と反対した途端、飛ばされたオリエンタルランド幹部もいるというが、この問題が再び暴かれれば加賀見氏にとって致命傷だ。
取引先に関するもう一つの疑惑は、加賀見氏と「頌栄建設」との関係である。本誌'05年7月号では既に、その件を報じている。頌栄建設が加賀見氏を都内料亭で頻繁に接待し、これを見返りにして仕事発注を受けており、とくによく使う浅草の某料亭に出入りする芸者・由美子さん(仮名)の銀行口座には、業者から年間数百万円の振り込みがあるとの疑惑である。加賀見氏と彼女との“特別な関係”が噂されただけに、注目を浴びていた。今回の“内部告発”は、それより踏み込んでいる。
〈東京ディズニーランド建設当時を知る関係者によると、どうやら頌栄建設の陰の実質オーナーは加賀見本人であるとのこと。現在では世の中に見えないように、加賀見に頌栄建設の金が裏金として入る仕組みにしているようですが、当時は加賀見がポロッと、自分がオーナーであることを話していたようです。これが事実であれば、組織的な背任・不当行為、業務上横領行為であり、許しがたい〉
■第3ディズニーランド構想も
本誌はかつて加賀見氏と芸者・由美子さんとの関係について問うたところ、「(彼女のことは)知ってるよ。覚えているよ」といっていた。しかし、取引業者(頌栄建設)が「女性に多額のお金を払っているなどということはあり得ない」と否定している。
一連の疑惑に対し、オリエンタルランドの上西京一郎取締役執行役員(広報担当)は「岡村専務は警察での実績もある。交通・警備などの面で警察の力は必要だ。(中央興発とは)事件の後、すぐに契約を解除した。舞浜ビルメンテナンスは中央興発がああいうことになったので、そのあとでグループ会社ということで無理をいってやってもらっている。頌栄建設との取引はいまもあるが、(加賀見氏が)陰のオーナーだということは断じてない」と答える。
オリエンタルランドは'08年7月、グループが運営するホテルとしては最大規模の「東京ディズニーホテル」を開業する。10月には、常設型劇場「シルク・ドゥ・ソレイユ
シアター東京」を東京ディズニーリゾートの敷地内にオープンさせる予定だ。
また、早ければ'10年をメドに、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーに次ぐ“第3のディズニーランド”を作る計画もある。候補地は関東圏外が基本条件で、アクセスのよい都市部を中心に検討しているという。食事やショッピング、アトラクションのすべてを数時間から半日で回れる、屋内型の娯楽施設を建設する構想だ。
日本のレジャー産業は東京ディズニーリゾートの独り勝ちといわれて久しい。しかし、末期的な内情を抱えるオリエンタルランドに、来園客を確保し続けられるのか。いつ黄昏が訪れようが、決して不思議ではない。(以下次号)
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