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■本誌に届いたお粗末な通知書
「オリエンタルランド（ＯＬＣ）の故高橋政知元会長と大物右翼との関係は、経済部記者なら、みんな知っていた。浦安の埋め立て事業は、京成電鉄と三井不動産が手掛けた一大事業だったが、漁業権の問題などさまざまな利権が絡んで闇の勢力が入り込んだ。加賀見（俊夫）社長はそれを背負い込んだだけ。彼はむしろ被害者だ」
元マスコミ関係者がこういって回っているという。かつて『文藝春秋』が田中角栄の金脈を追及したときに、政治部記者たちは「そんなことは前から知っていた」といった。本誌が一貫して追及してきた東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドのスキャンダルについても、経済部記者たちは同じようなことをいっていたものだ。しかし、社会部が次第に動き出し、『読売新聞』が先陣を切ると、各社は堰を切ったように報道し出した。
オリエンタルランドは東京ディズニーランドやディズニーシーの広告を新聞やテレビに大量出稿している。さらにマスコミ関係者には入場パスポートやキャラクターグッズなどをプレゼントする。田中角栄が新聞記者や出版社幹部にお中元やお歳暮を配っていたのと同じ構造で、疑惑があるのに何も書けない状態になってしまうのである。
本誌には一連の報道に対してオリエンタルランド代理人を名乗る弁護士名で「通知書」が送られてきた。そこには「当該記事が真実に反するものであって、当社（ＯＬＣ）の名誉を侵害したことを謝罪する旨の広告を掲出するように要求いたします」と書かれていた。
そのうえで「貴社（テーミス）及び当該記事の担当記者らに対し、名誉回復処分請求及び損害賠償請求等の法的措置を講じることを検討せざるを得ないことを予めお伝いたすぃます」と内容証明で送ってきたのだ。
しかも宛名は弊社代表取締役で、「伊藤嘉男様」となっていた。
正しくは「伊藤寿男」である。パソコンの変換ミスの文章と併せても、いかにオリエンタルランドが、お粗末な対応しかできないかがわかる。
本誌はオリエンタルランド関係者や出入り業者、捜査関係者など多数の関係者にインタビューを行うなど、多角的な取材を行って記事を掲載している。日本の代表的アミューズメントパークを運営し、東証一部上場企業であるオリエンタルランドの企業体質に重大な問題があるのではないかということを指摘するものである。
その後、オリエンタルランドは６月17日、千葉県庁内で記者会見を開き、 さらなる疑惑について『事実』を認めた。約20年間、右翼団体幹部が関係する親族企業と不透明な取引をしていた問題で、同じ右翼団体幹部が関連する「京三建設工業」とゴルフ場開発会社「酒々井開発」に計３千万円余りを出資していたことが発覚したのだ。
加賀見社長は会見で「青天の霹靂」と語り「一連の事態を深くお詫び申し上げます」と頭を下げた。しかし、もともと右翼関連企業との『付き合い』は高橋元会長が持ってきたもので、自分は知らなかったという姿勢がみえみえだった。実際、３千万円の出資を決めた当時は、すでに加賀見氏が社長に就任しており、「社長決裁」の判断である。それなのに、右翼団体幹部との関係を知らなかった、では通らない。
■大新たな取引業者との『関係』も
オリエンタルランド元幹部がいう。
「加賀見社長がなぜ、ＯＬＣ本社ではなく、千葉県庁で会見をやるのか。それはディズニーランド自体が千葉県を巻き込んだ一大プロジェクトであるということをアピールするためだ。自分がもし、刑事事件に問われるようなことがあれば、当然千葉県庁関係者も問題が出てくるぞ、ということ。『酒々井開発』についても千葉県内のゴルフ場開発や宅地開発と結びついており、
加賀見氏は『千葉県の発展のために協力しているのだ』ということを主張して、本来の疑惑から逃げている」
京三建設工業とともに、本誌が独自に入手した情報は、頌栄建設という土木工事を請け負う会社との取引である。 この会社は従業員約８名の会社だが、
約11億円〜12億円の売上高がある。とくに、'99年８月期はオリエンタルランドの整備工事が大量に発注され、売上高は25億円を超えている。それ以降も、東京ディズニーランド内の道路整備工事を主たる受注にし、毎年コンスタントな売り上げを見せている。
あるゼネコン関係者は「頌栄建設の得意先は、ほとんどがオリエンタルランドといっていい。さしたる大きな工事を請け負うわけでもないのに、これだけ恒常的な受注がもらえるのは、加賀見社長との『特別な関係』があるからだという見方が強い」と話す。
東京・墨田区の頌栄建設を訪ねてみると、大通りに面した３階建ての建物。郵便受けが一つしかないにもかかわらず、頌栄以外に（株）サンケン東京支店、日本管路サービス、ＥＰＲ工法協会、（株）山城東京支店という４つの会社の名前がそこに記載されていた。
実は、本誌に寄せられた『告発』よれば、頌栄建設が加賀見社長を都内料亭で頻繁に『接待』し、これを見返りにして仕事発注を受けているという。とくによく使うのが、浅草にある某料亭で、ここになじみの芸者・由美子さん（仮名）を呼んでいるという。飲食代や芸者の花代、祝儀なども、業者持ちだというのだ。
さらに『告発』によれば、由美子さんの銀行口座へ、取引業者から年間数百万円単位の振り込みがあるという。
加賀見社長が彼女にぞっこんであることを前提にしたうえでの巧妙な『接待』の意味があることは想像がつく。
■「知ってるよ。覚えているよ」
本誌はこの由美子さんを直撃した。
東京・下町。旧遊郭街の一画にある台東区に彼女のマンションがある。由美子さんは現在、40代後半だが、東北出身でほっそりとした和風美人である。
マンションの郵便受けには由美子さんの本名である「Ｆ」の苗字さえ記されていない。３階のフロアーで降りると、左奥に彼女の住む部屋があった。
しかし、そこにも表札は掲げられておらず、まさに周囲にわからないようにひっそりと暮らしているようである。
――オリエンタルランドの加賀見社長のことで聞きたいことがあります。
由美子 私にはわかりませんので、
答えのしようがありません。
――金銭に絡むことで、ぜひ、確認しておきたいことがあるのですが。
由美子 本当に私は……。わかりませんから……。
こういってドアさえも開けてもらえず、後はまったく返事がなくなった。
お座敷を上げたことのある客がいう。
「彼女は芸妓衆の中でも立方と呼ばれる踊り手で、浅草花柳界では一、二を争うほどの美人芸者として知られている。いかにも日本的な和服が似合う人で、あでやかな芸妓姿を一度見れば誰しも魅せられてしまう。それでいて、
控え目で奥ゆかしく、オリエンタルランドの加賀見社長が怩イ執心揩ニの噂はずいぶん前から聞こえてきた」
一連の疑惑について、オリエンタルランドにぶつけたところ、安岡譲治広報部長はこう答えた。
「頌栄建設との取引は弊社にとって十分見合った実態がある。いつからかはわからないが、古くから取引がある。 ディズニーランドやシーの大規模な工事ではなく、周辺で日々起こるような、何かが壊れたとか、縁石に車がぶつかったなどの営繕的な仕事だ。こういう仕事は複数の会社から相見積りをとってコンペをするわけにはいかない。（接待については）頌栄建設と会食したことはないのかという話になれば、加賀見も『過去に会食したことはある』といっている。ただいろいろなお付き合いをする企業との親睦のなかでの話。頻繁に接待を受けている事実はない」
では、芸者・由美子さんとの『お付き合い』の問題はどうか。
「これは加賀見がいっているが、おそらく『Ｆ』という浅草の料亭のことだと思う。この料亭には年に２、３回行くことがある。そのときにお座敷にくる芸者さんの１人だ。加賀見も彼女のことは『知ってるよ。覚えているよ』といっている。だが、取引業者がこの女性に多額のお金を払っているなどということはあり得ない。これは加賀見自身が断言している」（安岡部長）
加賀見社長は６月29日の株主総会で、会長兼最高経営責任者（ＣＥＯ）に就いた。安岡部長は「すべての役員が役員報酬を返上すると決めたので、これが私どもの責任の取り方。ＣＥＯ就任は一切変更しない」という。
底なしのように次々と出てくる新たな疑惑を放っておいて、このまま頬被りを決め込むつもりなのか。
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