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| ＮＨＫと会計検査院に「癒着」の疑い |
| 「ＮＨＫ学園などに歴代ＯＢが天下って」 |
■「指摘」せず「記す」にとどめた
国や政府系機関の決算をチェックする「税金の番人」会計検査院は、例年11月末、予算の不適切な使われ方の事例を列挙した「決算検査報告」を公表している。その検査報告で、’02年はある一つの項目が目を引いた。
「日本放送協会の非現用不動産の管理、処分状況について」
初めに説明しておくと、検査報告には、各省庁や政府関係機関などの会計経理について、予算の使い方が不適切と認定した「指摘事項」（後述）と、「特定検査対象に関する検査状況」が記載されている。
今回、日本放送協会（ＮＨＫ、海老沢勝二会長）が指摘された不動産の管理・処分状況は、前者の「指摘事項」ではなく、後者の「特定検査対象」の部分に記載されている。
「特定検査対象」とは国民の関心が極めて高いトピックスや、国会の審議で取り上げられた問題について、とくに検査状況を抜き出して公表するものだ。
’02年はＮＨＫのほかに、「在外公館の会計経理」（外務省の大使館や総領事館の検査）や、「特別会計の決算分析」（各省庁所管の全37特別会計を検査）などを取り上げた。
ＮＨＫの検査の背景や着眼点を、決算報告では次のように説明している。
「（ＮＨＫでは）全国の放送局の設備や放送所の送信設備などをデジタル放送用に変更する必要があり、これに多額の費用を要する。当面、デジタル化に伴う経費は現行の受信料で対応していくとしている。今後のデジタル化の進展に応じて、アナログ放送の放送所が廃止されるなどして、非現用不動産の増加が見込まれることから、非現用不動産の管理体制が整備されているか、また、処分が適切に行われ、収入の確保が図られているかなどを検査した」
調査では、ＮＨＫが各地に抱える非現用不動産（遊休不動産）のうち65件（取得価格約２億６千500万円）をピックアップした。それによると、’02年度の固定資産税課税評価額を基に算定した「処分見込額」は、総額で約74億円に上ることが判明した。取得時の28倍近くにまで跳ね上がっており、大きな「含み益」を抱えていることになる。
ところが、このうち「売却のための条件整備が済んでいないもの」が24件（処分見込額約25億５千万円）、「売却のための条件整備はなされているが、売却に至っていないもの」が29件（約45億１千万円）もあった。検査報告はこう締めくくっている。
「非現用不動産の管理及び処分に当たっては、（中略）なお一層、売却のための条件整備等の促進に努めることが望まれる。本院としても、非現用不動産の管理が適切に行われ、効率的な売却が進められているかなどについて、引き続き注視していくこととする」
だが、このＮＨＫに対する検査報告を訝る声が出ている。
「そもそも『指摘事項』にせず、あえて『特定検査対象に関する検査状況』として取り上げたこと自体、（ＮＨＫのチェックに）腰が引けている証拠だ」（検査院関係者）
検査を受ける側にとって、「指摘事項」に記載されるか、「特定検査対象」で�廖�鷸癈碣钁竡・和膂磴い澄・峪愿・・燹廚蓮↓”堙・・燹↓・娶・鯢充┐桂瑤禄菽屬鰺弋瓩靴浸・燹↓・愿Δ亡陲鼎�押Ρの処置を講じた察�燹↓ぬ簑蠅鯆鶺・掘∋・屬硫・韻鯊イ稿探�察�燹宗修裡瓦弔紡臺未気譴襦｣
いずれにしても、省庁側が予算の返還を求められたり、改善処置を取ったかどうか翌年度もチェックを受けるなど、甚だ不名誉な事態だ。
これに対し、「特定検査対象に関する検査状況」は文字通り、検査状況を記すにとどまる。そのため、「指摘事項」に掲載されまいと抵抗する省庁側との「妥協の産物」にもなり易い。
■ＮＨＫ学園に審議官が天下り
象徴的なエピソードがある。
’00年９月、防衛庁が新初等練習機を調達するために入札を行ったところ、
富士重工業とスイスのピラタス社が参加した。結果的に富士重工の製品が選定されたが、スイス政府が「入札が不透明だ」として問題視した。入札の経緯を調査した検査院は、２年前の検査報告の中で、入札に不手際があったことを事実上認め、「特定検査対象」として掲載した。
ところが、防衛庁は翌月、検査報告を一方的に要約した文書を作成。「不適切と認められる事態はなかった」と記して、スイス政府に送付してしまった。この問題は、’02年４月の衆議院安全保障委員会で、故石井紘基代議士（民主党）が取り上げたが、中谷元・防衛庁長官（当時）は「検査報告の趣旨を説明した」と居直ってしまった。
つまり、「特定検査対象」として掲載した以上、検査院は「不適切」とまでは指摘していないことになる。「誤解を招きかねない」と検査院は防衛庁に口頭でクレームをつけたが、結局それ以上の対応をとることは出来なかった。
今回のＮＨＫの非現用不動産に関する検査も「特定検査対象」に掲載されたが、「内容的には『指摘事項』にしてもいいもの」（前出関係者）との声もある。検査は、指摘されたくないＮＨＫの意を汲んだ「妥協の産物」だったのか。なぜ、検査院はＮＨＫに厳しい指摘ができなかったのか。
「ちゃんと『人質』を取っていれば、無理も言い易い」
あるＮＨＫ関係者が苦笑いする。
実は、学校法人「ＮＨＫ学園」の監事ポストに、’86年以来、検査院の審議官クラスのＯＢ４人が就いているのだ。「人質」とは、つまり「天下り」受け入れのことである。現在の監事、中村修三氏は第２局審議官を最後に’99年度に検査院を退職し、’00年１月にＮＨＫ学園に着任した。
ＮＨＫ学園は’62年、ＮＨＫによって設立された。ＮＨＫの放送を通じて勉強する通信制の高校として開校したが、現在は社会人対象の生涯学習通信講座や、講師から直接指導を受けるオープンスクールも開設している。東京・国立市に本校を置き、三角哲生・元文部事務次官が校長を務める。
学園自体は検査院による検査の対象外だ。しかし、ＮＨＫから助成金を受けており、その額は’01年度だけで３億５千万円に上る。検査対象と密接な関係のある団体に、検査する側の人物が天下りをして、果たして公正なチェック機能が望めるのだろうか。
ＮＨＫ学園が、どんな経緯で検査院の天下り先となったのか。ＮＨＫ政治部ＯＢの一人は、こう推測する。
「（検査院ＯＢの受け入れが始まった）’86年頃といえば、総理府（当時）が公社・公団や特殊法人の運営に関与の度合いを強めようと圧力をかけていた。ＮＨＫ学園の天下り受け入れは、これを防ぎたかったＮＨＫが用意した小さなエサだったのではないか」
■「つなぎポスト」も提供した？
「天下り」にまつわる検査院とＮＨＫとの接点は、これだけではない。
他省庁の事務次官にあたる検査院事務総長を務めた三原英孝氏は、’91年７月に退職すると、同年11月、ＮＨＫ厚生文化事業団に副理事長として天下った。ところが、三原氏は翌年７月、証券不祥事の再発防止を目指して発足した証券取引等監視委員会の初代委員の一人に任命されたのだ。ともに初代委員となったもう一人は、ＮＨＫの元解説委員長の成田正路氏である。
三原氏が同事業団に在職したのは、わずか半年余り。これでは、ＮＨＫが三原氏の「つなぎポスト」を用意したと思われても仕方がない。しかも三原氏は、ＮＨＫの検査を担当する第５局の局長まで経験していた。
こうした状況を、ＮＨＫと検査院は、どう認識しているのだろうか。
ＮＨＫは書面でこう回答した。
「ＮＨＫは、会計検査の『聖域』ではありません。昭和25年に放送法が施行されて以来、毎年会計検査院の検査を受けています」（広報局経営広報部）
検査院ＯＢがＮＨＫ学園に天下っている事実と、歴代の天下りの氏名については、こうかわした。
「検査報告の中で、お尋ねになっているような『ＮＨＫ学園の役員ポストに、数年間にわたり、会計検査院の出身者が就いている』との指摘を受けたという事実は全くありません」
一方、検査院に対しても同様に、ＮＨＫ学園の役員に就いた歴代ＯＢの氏名を聞いたが、現職の中村氏以外の氏名は次の理由で明かさなかった。
「’99年４月の中央省庁等改革推進本部決定がされる前（に天下ったＯＢの氏名）は、公表を想定していなかったので回答を控えたい。また、検査とＯＢの再就職とは全く関係がない」（渉外広報室）
両者の「癒着」と見られても仕方ない現状は、早急に改めるべきだ。 |
| （2003年2月号掲載） |
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